『ナッツ』――専制君主国家を生きる幸福。

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comment:: ラカンは、「人間は部分になりたがるものだ」と言いました。たとえば、社会を受け入れることと社会に受け入れられることが同値であるには、社会の部分でいなければなりません。しかし、何故部分になりたがるのか、その本質まで辿ると、部分対象に突き当たります。これは自分と対象が未分化的な状態です。つまり、部分であることを突き詰めれば突き詰めるほど、自他未分化的になってしまう、非部分化してしまうのです。これは、以前とらさんが仰った「「宇宙を愛するがゆえに自分を愛する」のと逆向きが普通の人」ということに通じることかと思います。しかしこのことは、言語的には矛盾しています。なので、神経症者＝定型人たちは、部分化と自他未分化状態の妥協点を固定化しようとます。それこそたとえば「エディプスコンプレックス」という言葉の中に。とらさんのような方は、この妥協点について、部分化方向の力が強いのではないか、と思います。この妥協点は、喩えるならば、他人との心的距離のようなものと考えてもよいでしょう。定型人は、言語的矛盾から逃れるため、この心的距離を一定に保ちたがる。一方非定型人は、一定に保ちたがらない、という言い方になるでしょうか。この心的距離を一定に保ちたがらないということは、山岸徹さんの、「アスペルガー症候群は依存症ではない」という主張にも繋がることかと思います。んで、こっからはなんていうか、自分でも微妙な言い方だと思うんですが、定型人女性は、定型人男性と比べるといくらか（傾向的に）非定型人寄りだと思うのですね。先の心的距離という言葉を用いるなら、心的距離を、一定に保ちたい（保たれたい）というのと、一定に保ちたくない、というのが共存している気がするのですよ。うん、心的距離という言葉を媒介させるとしっくりくる。なので、この映画の主人公についても、「固定化」と言い切れはしないけれども、固定化したがる、されたがるのも女性だと思うのですね。結果、わたしのアメリカ人への偏見（おい）も含めると、やや「家族内関係への固定化を受け入れている」解釈寄りの立場になってしまう、ということでしょうか。
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