アベサダマリア
2008/08/03/Sun
セックスを覚えて、悟ったことがある。
わたしは阿部定だ。
本当に、だけど冗談交じりに、だけどなんの含みもなく、そう思った。男にそう言った。
「殺されるのは勘弁」
と男は笑った。
わたしも笑った。
自分の笑みがどういう笑みなのかわからなかった。
炸裂。
炸裂している。
部分対象という、研ぎ澄まされた球体が、不思議にも、一つの領域に押し込まれている。
あなたは苦しくないの?
わたしは苦しい。
恋愛が、セックスが、苦しい。
痛い。
わたしのあなたの研ぎ澄まされた球体が、わたしとあなたの領域を行き来している。
炸裂しながら。
過熱しながら。
研ぎ澄まされた球体は、部屋の中に淀むものもあれば、太陽系の向こうまで飛んでいっているものもある。
身勝手な球体たち。
たまたま、そこにあった球体を拾った。
それは、ペニスだった。
理想自我と自我理想を考えていた。
わたしは阿部定なら、とてもよい表現が浮かんだ。
理想自我がアリバイで、自我理想はその証拠だ。
研ぎ澄まされた球体が飛び交うあの時空がアリバイで、たまたま拾ったペニスが証拠だ。
男のペニスを咥えていると、噛み千切りたくなった。
男を愛していたから。
阿部定は、完全犯罪を成し遂げた。
ペニスという証拠で、アリバイを成立させた。
わたしは阿部定だった。
完全犯罪という舞台で、主役の阿部定そのものになっていた。
研ぎ澄まされた球体が、縦横無尽に、様々なスピードで、飛び交う時空。
痙攣。
溺れないように、何かにしがみつく。
それがたまたま、ペニスだった。
殺すも殺されるも、そこでは同じ。
殺した殺された後に来る、永遠の不動。
「定、石田の吉二人キリ」という不動。
炸裂と過熱と痙攣と、表裏一体の不動。
炸裂し過熱し痙攣した、その瞬間の不動。
阿部定という癲癇持ちに、「人間一生に一人じゃないかしら、好きになるのは」と言わしめた不動。
わたしは笑った。
どんな意味も込められたくない笑みだった。
部分対象は、ライナスの毛布だ。
この研ぎ澄まされた球体は、わたしの毛布だ。男の血に染まったステテコだ。
二階堂奥歯の場合、たまたまぬいぐるみだった。
阿部定の場合、たまたまペニスだった。
それらは、世界守護者だ。
身勝手なぬいぐるみたちが、宇宙を舞台にサーカスを繰り広げる。
こんなものが、一つの領域に押し込められている方が、不自然なのだ。
正常であることの方が、異常なのだ。
わたしは笑った。
意味がサーカスを繰り広げていた。
それはとても苦しかった。
痛かった。
「本音は僕を好きなクセに」
わたしの笑いを、一つの意味に閉じ込めようとしている。
閉じ込められたい。
この苦痛から逃れたい。
セックスなどしたくない。
だから、わたしはセックスが好きだ。
阿部定は、言葉を覚えるのが遅かったそうだ。
わたしも、言葉を覚えるのは遅かった。
わたしは、言葉フェチではなく、言葉コンプレックスだ。
真のエディプスコンプレックスだ。生々しいオイディプスだ。
わたしにとっての言葉は、ペニスであり、ぬいぐるみであり、毛布であり、ステテコだ。
抑圧する父などではない。
それは、部分対象だ。
わたしは笑った。
一つの領域を挑発していた。
それはとても苦しい。痛い。
だから、わたしは笑った。
わたしは阿部定だから。
だけど、わたしにはまだ、アリバイも証拠もない。
わたしは阿部定だ。
本当に、だけど冗談交じりに、だけどなんの含みもなく、そう思った。男にそう言った。
「殺されるのは勘弁」
と男は笑った。
わたしも笑った。
自分の笑みがどういう笑みなのかわからなかった。
炸裂。
炸裂している。
部分対象という、研ぎ澄まされた球体が、不思議にも、一つの領域に押し込まれている。
あなたは苦しくないの?
わたしは苦しい。
恋愛が、セックスが、苦しい。
痛い。
わたしのあなたの研ぎ澄まされた球体が、わたしとあなたの領域を行き来している。
炸裂しながら。
過熱しながら。
研ぎ澄まされた球体は、部屋の中に淀むものもあれば、太陽系の向こうまで飛んでいっているものもある。
身勝手な球体たち。
たまたま、そこにあった球体を拾った。
それは、ペニスだった。
理想自我と自我理想を考えていた。
わたしは阿部定なら、とてもよい表現が浮かんだ。
理想自我がアリバイで、自我理想はその証拠だ。
研ぎ澄まされた球体が飛び交うあの時空がアリバイで、たまたま拾ったペニスが証拠だ。
男のペニスを咥えていると、噛み千切りたくなった。
男を愛していたから。
阿部定は、完全犯罪を成し遂げた。
ペニスという証拠で、アリバイを成立させた。
わたしは阿部定だった。
完全犯罪という舞台で、主役の阿部定そのものになっていた。
研ぎ澄まされた球体が、縦横無尽に、様々なスピードで、飛び交う時空。
痙攣。
溺れないように、何かにしがみつく。
それがたまたま、ペニスだった。
殺すも殺されるも、そこでは同じ。
殺した殺された後に来る、永遠の不動。
「定、石田の吉二人キリ」という不動。
炸裂と過熱と痙攣と、表裏一体の不動。
炸裂し過熱し痙攣した、その瞬間の不動。
阿部定という癲癇持ちに、「人間一生に一人じゃないかしら、好きになるのは」と言わしめた不動。
わたしは笑った。
どんな意味も込められたくない笑みだった。
部分対象は、ライナスの毛布だ。
この研ぎ澄まされた球体は、わたしの毛布だ。男の血に染まったステテコだ。
二階堂奥歯の場合、たまたまぬいぐるみだった。
阿部定の場合、たまたまペニスだった。
それらは、世界守護者だ。
身勝手なぬいぐるみたちが、宇宙を舞台にサーカスを繰り広げる。
こんなものが、一つの領域に押し込められている方が、不自然なのだ。
正常であることの方が、異常なのだ。
わたしは笑った。
意味がサーカスを繰り広げていた。
それはとても苦しかった。
痛かった。
「本音は僕を好きなクセに」
わたしの笑いを、一つの意味に閉じ込めようとしている。
閉じ込められたい。
この苦痛から逃れたい。
セックスなどしたくない。
だから、わたしはセックスが好きだ。
阿部定は、言葉を覚えるのが遅かったそうだ。
わたしも、言葉を覚えるのは遅かった。
わたしは、言葉フェチではなく、言葉コンプレックスだ。
真のエディプスコンプレックスだ。生々しいオイディプスだ。
わたしにとっての言葉は、ペニスであり、ぬいぐるみであり、毛布であり、ステテコだ。
抑圧する父などではない。
それは、部分対象だ。
わたしは笑った。
一つの領域を挑発していた。
それはとても苦しい。痛い。
だから、わたしは笑った。
わたしは阿部定だから。
だけど、わたしにはまだ、アリバイも証拠もない。
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