自分で寝ているか起きているかわからない、でも事後的に考えると寝てたんだろうなと、というか夢自体が半覚醒状態みたいなもんだし、なんて状態の話。
ベランダに死にかけているカエルがいた。
同居人が飼っている(と言っても野放しだったが)カエルで、同居人がしばらくうちにいないあいだ「面倒見てくれ」と頼まれたカエルである。
ああまずいと思う。エサとか水あげないと。
しかしこのまま殺してやりたい気もする。同居人への反発じゃなくて、反発もあるのだろうか。
というよりカエルを忘れていた自分を否定したくなかった。
犬がいる。昔買ってた犬。とっくに死んでる。夢の中でもうすうすそうわかっていた犬。
雑種だが妙に気高いと言うか、犬って飼っている家族を脳内で序列化しているなんて言うけれど、たぶんわたしは下に見られてたのだと思う。
まあその犬が、ベランダに通じる窓に飛びかかっている。「外に出してくれ」という合図だ。
室内犬というわけではないが部屋にあげていたことが多かった。その犬はどんなに外がどしゃぶりであってもおしっこしたくなったらこうして外でする。どしゃぶりのときなど足や体を拭くのがめんどくさいので、いっそ部屋の中で、いやそれは困るけど、トイレでしてくれたらなあ、と。わたしより序列が高いのなら。
どうしようと思う、窓を開けるか否か。カエル殺したりしちゃうんじゃないかと。
しかしわたしの中で優先度は犬の要求の方にあったので、開けた。
隣の部屋のデブ猫(実際は飼ってない)が侵入していた。ああケンカになるかな、とばっちりでカエル死ぬかな、死んでほしいのかな、なんて思うがまあなるようにしかならないだろう、と思った。
わたしの視野の下方に肌色の棒がある。腕だろう。前腕だろう。
誰の腕だ?
わたしのか、わたしのだろう。
試しに動かしてみよう。動かない。視野の横の方で動いている腕っぽいものがある。
じゃあこれはなんだろう。
窓の方を見ている。犬とデブ猫は別にケンカしてなかったが、やっぱりカエルを殺していた。ついでにネズミも殺していた。
カエルとネズミのカラフルな内臓が見える。
妙にうんざりする。
八つあたりになるのかもしれないが、正当ではあると思い、ベランダからネコを追いだす。
それを尻目に犬が当然のように開けた窓から部屋に入ろうとするのが見えてむかつく。
うつぶせでバンザイして寝ている格好。
なのに目の前に一本腕がある。
わたしの腕ではない、誰の腕だろう。
そう思って、バンザイしている右手で、三本目の腕と握手するように触ろうとすると、三本目の腕の方が握ってきた。
正直少し驚いた。
しかし三本目の腕もわたしの腕である。わたしが両手を握ってバタバタさせているだけ、とも思った。
セミの鳴き声がうるさい。セミなんていないのに。多分道路工事だ。いや子供の声か。
やけにひびく。
まるで部屋の壁一面にセミが貼りついているんじゃないかというぐらい。
窓から桜の木が見える。これは現実の話。シーズンになると桜とその下の花見客を見下ろしながら酒を飲んだりする。
酒を飲んでいるんじゃないな、酒がわたしの体に侵入してくるんだよ。
酒飲みもこうなっちゃ終わりだね。