迂回路
2012/06/10/Sun
一度迂回した道をわざわざ戻るなら、何も問題ないのであれば迂回しない道を選ぶのが普通だと思うが、わたしは迂回した道を選んだ。
家に帰りたくない。
どこかに行きたくもない。
迂回した道を歩くとき、ある一瞬だけが、わたしが脳を操れる瞬間である。
迂回しない道は、この世界では、逆に遠くなる。ある場所にいきたいわけでもなくやってきた場所に戻るわけでもないのだから、どこかに辿り着いても、道は続く。
であれば最初から迂回路を歩けばよい。
しかもこの迂回路は、ただ何気なく迷い込んだ人にはそう思えないだろうが、そうだと知っているわたしにとっては、迂回路なだけに人間の安全を保障しているわけではなく、警戒本能が過敏になるため、いろいろなものを発見できる。
飽きない。
脈絡のないシーンをつぎはぎしただけの映画のような。
しかしそれは迂回路ではない道も同じなのだ。わたしが警戒本能を強めれば、いろいろなものを発見できる。
だが迂回路ではない道には人間の安全を保障する装置がたくさんある。信号機とかそうだ。
迂回路に信号機などはないが、もしあったとしたら脈絡のないシーンの一つとしてあるだろう。
信号機も疑う対象となる。警戒すべき対象となる。
だかこの迂回路は千変万化だ。同じものが数分後同じであったためしがない。迂回路ではない道では、ドアの前で座っている犬と、数分後のドアの前で立っている犬は同じとなるが、この迂回路では別物だ。座っている犬と立っている犬は脈絡のないシーンをただ繋ぎあわせただけの映像だ。
そしてそれは黒い犬で、死んだ少女を屠っていたりする。この犬が殺したかどうかはわからない。脈絡のないシーンばかりなのでわからない。
もう少し歩くと、屠られていた少女がドレスのようなものを着せられて不満顔をしながら写真を撮られている。
迂回路なので、彼女が着ているドレスは立体裁縫で縫われたものだとわかる。いいとこのお嬢さまなのだろう。
しかし、この少女が犬に屠られているシーンを前に見ていたとしても、「ざまあみろ」などとは思えない。先に少女が屠られているシーンを見てしまったからだ。これが逆であったら「ざまあみろ」などと思うのかもしれないが、それは迂回路ではない道の話であり、迂回路ばかり歩いているわたしは、時系列を逆に組み立てなおす能力が低くなってしまったのだろう。
この迂回路は嘘ばかりだ。かと言って迂回路ではない道が嘘ではないというわけではない。両方嘘だ。道があることが嘘なのだ。
横殴りの雨が降っている。こういった雨は嫌いじゃない。小雨は迂回路らしいが、迂回路じゃない道にも降る。
ここだけの雨。
無方向な雨。
雨自体が嘘だ。
だけどどっちに降っているかだけはある。重力もあやふやだが、それぞれの雨粒がどっちかに向かっているのはわかる。
迂回路を歩いていれば。
家に帰りたくない。
どこかに行きたくもない。
迂回した道を歩くとき、ある一瞬だけが、わたしが脳を操れる瞬間である。
迂回しない道は、この世界では、逆に遠くなる。ある場所にいきたいわけでもなくやってきた場所に戻るわけでもないのだから、どこかに辿り着いても、道は続く。
であれば最初から迂回路を歩けばよい。
しかもこの迂回路は、ただ何気なく迷い込んだ人にはそう思えないだろうが、そうだと知っているわたしにとっては、迂回路なだけに人間の安全を保障しているわけではなく、警戒本能が過敏になるため、いろいろなものを発見できる。
飽きない。
脈絡のないシーンをつぎはぎしただけの映画のような。
しかしそれは迂回路ではない道も同じなのだ。わたしが警戒本能を強めれば、いろいろなものを発見できる。
だが迂回路ではない道には人間の安全を保障する装置がたくさんある。信号機とかそうだ。
迂回路に信号機などはないが、もしあったとしたら脈絡のないシーンの一つとしてあるだろう。
信号機も疑う対象となる。警戒すべき対象となる。
だかこの迂回路は千変万化だ。同じものが数分後同じであったためしがない。迂回路ではない道では、ドアの前で座っている犬と、数分後のドアの前で立っている犬は同じとなるが、この迂回路では別物だ。座っている犬と立っている犬は脈絡のないシーンをただ繋ぎあわせただけの映像だ。
そしてそれは黒い犬で、死んだ少女を屠っていたりする。この犬が殺したかどうかはわからない。脈絡のないシーンばかりなのでわからない。
もう少し歩くと、屠られていた少女がドレスのようなものを着せられて不満顔をしながら写真を撮られている。
迂回路なので、彼女が着ているドレスは立体裁縫で縫われたものだとわかる。いいとこのお嬢さまなのだろう。
しかし、この少女が犬に屠られているシーンを前に見ていたとしても、「ざまあみろ」などとは思えない。先に少女が屠られているシーンを見てしまったからだ。これが逆であったら「ざまあみろ」などと思うのかもしれないが、それは迂回路ではない道の話であり、迂回路ばかり歩いているわたしは、時系列を逆に組み立てなおす能力が低くなってしまったのだろう。
この迂回路は嘘ばかりだ。かと言って迂回路ではない道が嘘ではないというわけではない。両方嘘だ。道があることが嘘なのだ。
横殴りの雨が降っている。こういった雨は嫌いじゃない。小雨は迂回路らしいが、迂回路じゃない道にも降る。
ここだけの雨。
無方向な雨。
雨自体が嘘だ。
だけどどっちに降っているかだけはある。重力もあやふやだが、それぞれの雨粒がどっちかに向かっているのはわかる。
迂回路を歩いていれば。
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