言葉というナイフ
2007/10/16/Tue
言葉とはナイフだ。諸刃の。
頭の中では、諸刃のナイフが所狭しと詰め込まれている。もちろんそれは自分を内部から傷つけるものになる。しかし、同時に自分以外のものから身を守る鎧ともなる。
これは、心中的とも言える。
即ち、言葉というナイフを詰め込んだ人間の精神世界は、心中的様相を帯びてしまっているのだ。
心中が嫌ならナイフを取り払い、捨ててしまえばいい。だけどできない。何故なら、人間にとっては、心中が快楽となるのだから。
「言葉なんか覚えるんじゃなかった」とは、心中という快楽の痛みによるうめきである。だがこの詩人は、「きみの血のなかにたったひとりで帰って」きてしまう。彼が詩人であるために、帰らなくてはならないのだ。
あるところに、水面に映る自分に恋してしまった若者がいました。
彼は、水面に映った思い人のことがなかなか忘れられませんでした。
あるとき彼は、せめて人形でも、と思いたち、言葉というナイフで、人形を削り上げました。
だけど、やっぱり水面に映った姿とは、どこか違います。
若者はたびたび水面に訪れます。そこでやっと気づきました。それが自分の姿だと。
若者は、ならば、と思います。
若者は、人形に合わせて、自分の顔を削り始めましたとさ。
――めでたしめでたし。
頭の中では、諸刃のナイフが所狭しと詰め込まれている。もちろんそれは自分を内部から傷つけるものになる。しかし、同時に自分以外のものから身を守る鎧ともなる。
これは、心中的とも言える。
即ち、言葉というナイフを詰め込んだ人間の精神世界は、心中的様相を帯びてしまっているのだ。
心中が嫌ならナイフを取り払い、捨ててしまえばいい。だけどできない。何故なら、人間にとっては、心中が快楽となるのだから。
「言葉なんか覚えるんじゃなかった」とは、心中という快楽の痛みによるうめきである。だがこの詩人は、「きみの血のなかにたったひとりで帰って」きてしまう。彼が詩人であるために、帰らなくてはならないのだ。
あるところに、水面に映る自分に恋してしまった若者がいました。
彼は、水面に映った思い人のことがなかなか忘れられませんでした。
あるとき彼は、せめて人形でも、と思いたち、言葉というナイフで、人形を削り上げました。
だけど、やっぱり水面に映った姿とは、どこか違います。
若者はたびたび水面に訪れます。そこでやっと気づきました。それが自分の姿だと。
若者は、ならば、と思います。
若者は、人形に合わせて、自分の顔を削り始めましたとさ。
――めでたしめでたし。