告発
2008/08/18/Mon
わたしの体から、たくさんの草木が生えている。
わたしは森だった。
わたしはわたしの体をさまよっていた。
森はうねった。
お腹がよじれるほど笑っているかのように、うねった。
針が落ちていた。
針を拾い、肩甲骨辺りを刺した。
血玉が浮かんだ。
カラフルな血玉だった。
辺り一面、カラフルな血玉に覆われた。
わたしは眠かった。なのに目は冴えていた。
森はうねった。
皮膚が裏返ったかのように、森は裏返った。
裏返ってしまったので、道はどこにも続かない。
森の中、座り込もうとする少女のわたしがいた。
わたしは少女に逃げるよう言いたかった。だけど言葉を忘れてしまった。
言葉を忘れてしまった。
言葉を忘れてしまった。
怖い。
わたしは泣いた。少女が泣いたのかもしれない。わからない。
森はうねった。
少女の顔は溶けていた。
血玉が、流れていた。
まだらの小川を成していた。
工場排水のようだった。
それは、一つのリアルだった。
森はうねった。わたしは泣いた。
幾何学的な光。
露光がおかしい。
朝だろうか。
眠い。なのに眠れない。
少女の鼻歌が聞こえる。
わたしは工場排水に塗れている。
重い体を持ち上げ、熱い精液のシャワーを浴びようと思った。
針が落ちていた。
わたしは泣いた。
冷蔵庫の中に、螺旋階段が広がっていた。
精液に満たされたワンルームで、意味がサーカスを繰り広げていた。
少女が破裂していた。
工事現場の騒音。
いつもと変わりない朝のワイドショー。
夢の続き。
雑音は、雑音だけど、一つの世界だ。
吐瀉物に満たされたコップ。
トイレ代わりのCDボックス。
あなたがわたしを犯した部屋。
わたしがあなたを殺した部屋。
意味がサーカスを繰り広げていた。
森はうねっていた。
少女は破裂していた。
わたしは言葉を忘れてしまった。
言葉を忘れてしまった。
言葉を忘れてしまった。
言葉を忘れてしまった。
言葉を忘れてしまった。
――会社行かなきゃ。行きたくない。
わたしの仕事は、段ボール箱に死体をつめること。
小さな死体なら楽だけど、大きいのになると一工夫いる。
会社を出ると、クレーンに首吊り死体をぶら下げたユニック車が、のろのろと走っていた。
死体は、股間からおびただしい血を流していた。
死体は去勢されていた。
それはわたしの国の王だった。とても若い王。だけど有能だった王。
ユニック車の後ろを、小中学生たちがよさこい踊りをしながらついていった。
無邪気な顔の中、踊りも表情もぎくしゃくしている子がいた。
気づいているのはわたしだけのようだ。
今わたしが告発すれば、その子は捕まって、処刑されるか国外退去を命じられるだろう。
わたしは大声で叫んだ。告発した。
ぎくしゃくしてた子は逃げた。
後を、薄緑の作業服を着た人たちが追っかけていった。
わたしはまだ言葉の国で生きていける、と思った。
誰かの代わりに。
※田村隆一『帰途』へのうんこ投げ。
わたしは森だった。
わたしはわたしの体をさまよっていた。
森はうねった。
お腹がよじれるほど笑っているかのように、うねった。
針が落ちていた。
針を拾い、肩甲骨辺りを刺した。
血玉が浮かんだ。
カラフルな血玉だった。
辺り一面、カラフルな血玉に覆われた。
わたしは眠かった。なのに目は冴えていた。
森はうねった。
皮膚が裏返ったかのように、森は裏返った。
裏返ってしまったので、道はどこにも続かない。
森の中、座り込もうとする少女のわたしがいた。
わたしは少女に逃げるよう言いたかった。だけど言葉を忘れてしまった。
言葉を忘れてしまった。
言葉を忘れてしまった。
怖い。
わたしは泣いた。少女が泣いたのかもしれない。わからない。
森はうねった。
少女の顔は溶けていた。
血玉が、流れていた。
まだらの小川を成していた。
工場排水のようだった。
それは、一つのリアルだった。
森はうねった。わたしは泣いた。
幾何学的な光。
露光がおかしい。
朝だろうか。
眠い。なのに眠れない。
少女の鼻歌が聞こえる。
わたしは工場排水に塗れている。
重い体を持ち上げ、熱い精液のシャワーを浴びようと思った。
針が落ちていた。
わたしは泣いた。
冷蔵庫の中に、螺旋階段が広がっていた。
精液に満たされたワンルームで、意味がサーカスを繰り広げていた。
少女が破裂していた。
工事現場の騒音。
いつもと変わりない朝のワイドショー。
夢の続き。
雑音は、雑音だけど、一つの世界だ。
吐瀉物に満たされたコップ。
トイレ代わりのCDボックス。
あなたがわたしを犯した部屋。
わたしがあなたを殺した部屋。
意味がサーカスを繰り広げていた。
森はうねっていた。
少女は破裂していた。
わたしは言葉を忘れてしまった。
言葉を忘れてしまった。
言葉を忘れてしまった。
言葉を忘れてしまった。
言葉を忘れてしまった。
――会社行かなきゃ。行きたくない。
わたしの仕事は、段ボール箱に死体をつめること。
小さな死体なら楽だけど、大きいのになると一工夫いる。
会社を出ると、クレーンに首吊り死体をぶら下げたユニック車が、のろのろと走っていた。
死体は、股間からおびただしい血を流していた。
死体は去勢されていた。
それはわたしの国の王だった。とても若い王。だけど有能だった王。
ユニック車の後ろを、小中学生たちがよさこい踊りをしながらついていった。
無邪気な顔の中、踊りも表情もぎくしゃくしている子がいた。
気づいているのはわたしだけのようだ。
今わたしが告発すれば、その子は捕まって、処刑されるか国外退去を命じられるだろう。
わたしは大声で叫んだ。告発した。
ぎくしゃくしてた子は逃げた。
後を、薄緑の作業服を着た人たちが追っかけていった。
わたしはまだ言葉の国で生きていける、と思った。
誰かの代わりに。
※田村隆一『帰途』へのうんこ投げ。