ひき肉の街
2008/08/30/Sat
昔働いていたスナックのママ曰く、飲兵衛にも農耕民族型と狩猟民族型があるらしい。
行きつけのお店で、数時間腰を据えて飲むタイプと、どんどん店を開拓して、一杯飲んだら次の店へ、というタイプ。芸能人や金持ちには後者が多いそうだ。
わたしは、前者のようだ。
そんなわたしでも、新しい店を開拓したくなる時がある。ちょっとした冒険。
わたしは、うらびれた感じの店が好きだ。
雑誌に出てくるようなコジャレたお店は、肌が合わない。
だけど、その日見つけた店は、きれいな店だった。コジャレているというより、落ち着いている。落ち着きすぎて、死んでいるようですら。客層も、ちょっとお金のあまった感じのジジイが多かった。
いいかもしれない、と思った。
ママは、結構年いっているにも関わらず、きれいな人だった。
ママは、ほとんど一見のわたしに、あっさりカミングアウトした。
元風俗嬢だったそうだ。
その時は、ふんふんそうなのね、ぐらいにしか思わなかった。新規のお客に対する定番のお喋りだろう、ぐらいに思っていた。
だけど、わたしは段々と居心地が悪くなってきた。お酒が回るほどに、余計なことばかりを考えるようになった。
何故この人はそんなことを軽々しく話せるのだろう?
ママの自分語りをする目が、わたしを見下しているように思えた。
店の落ち着いてる感じもいけなかった。それがわたしの不快を助長した。店内の空間そのものが、わたしを見下していた。
風俗で働いている友だちがいた。会社で肩肘張って生きている子たちより、その子とよく飲んだ。
その子と行ったような、いつもわたしが行くような、うらびれた感じの店だったら、常連になっただろう。
だけど、わたしはその店に、もう行く気がしない。
慣れないことをするもんじゃない。
店を出た時、それほど酔ってなかったのに、地面がひき肉になっていた。
そのひき肉は、わたしの肉だった。
何故なら、歩くたびに痛かったから。皮膚と肉の間が。
自分の判断基準がよくわからない。
一人で飲み歩くから、こんな目に遭うのだ。
家に帰って、記憶を反芻して、もう行くのはやめようと思った。
ひき肉の街には、わたし一人しかいない。
ひき肉の世界を生きていると見抜かれたから、そんな話をされたのだろうか。
そう思うと、余計に不快になった。
その日は、ビール一本で、気持ち悪くなった。
行きつけのお店で、数時間腰を据えて飲むタイプと、どんどん店を開拓して、一杯飲んだら次の店へ、というタイプ。芸能人や金持ちには後者が多いそうだ。
わたしは、前者のようだ。
そんなわたしでも、新しい店を開拓したくなる時がある。ちょっとした冒険。
わたしは、うらびれた感じの店が好きだ。
雑誌に出てくるようなコジャレたお店は、肌が合わない。
だけど、その日見つけた店は、きれいな店だった。コジャレているというより、落ち着いている。落ち着きすぎて、死んでいるようですら。客層も、ちょっとお金のあまった感じのジジイが多かった。
いいかもしれない、と思った。
ママは、結構年いっているにも関わらず、きれいな人だった。
ママは、ほとんど一見のわたしに、あっさりカミングアウトした。
元風俗嬢だったそうだ。
その時は、ふんふんそうなのね、ぐらいにしか思わなかった。新規のお客に対する定番のお喋りだろう、ぐらいに思っていた。
だけど、わたしは段々と居心地が悪くなってきた。お酒が回るほどに、余計なことばかりを考えるようになった。
何故この人はそんなことを軽々しく話せるのだろう?
ママの自分語りをする目が、わたしを見下しているように思えた。
店の落ち着いてる感じもいけなかった。それがわたしの不快を助長した。店内の空間そのものが、わたしを見下していた。
風俗で働いている友だちがいた。会社で肩肘張って生きている子たちより、その子とよく飲んだ。
その子と行ったような、いつもわたしが行くような、うらびれた感じの店だったら、常連になっただろう。
だけど、わたしはその店に、もう行く気がしない。
慣れないことをするもんじゃない。
店を出た時、それほど酔ってなかったのに、地面がひき肉になっていた。
そのひき肉は、わたしの肉だった。
何故なら、歩くたびに痛かったから。皮膚と肉の間が。
自分の判断基準がよくわからない。
一人で飲み歩くから、こんな目に遭うのだ。
家に帰って、記憶を反芻して、もう行くのはやめようと思った。
ひき肉の街には、わたし一人しかいない。
ひき肉の世界を生きていると見抜かれたから、そんな話をされたのだろうか。
そう思うと、余計に不快になった。
その日は、ビール一本で、気持ち悪くなった。