「世界は劇場、人生は夢」
2009/02/04/Wed
こことかで述べた「わたしは自分というゲル状の狂気を固体化させることしかやっていない」について、ふと『バオー来訪者』というマンガを思い出した。皮膚が硬化しぴしぴし割れる。硬化した皮膚の一部が敵を切り裂く刃となる。内容忘れたけどそういうイメージだな、と。
楽しい夢を見るようになった。それがやけに辛い。前向きな自殺へと背中を押されているようで。
わたしはばりばり正常人だった。快楽原則主義者であり現実原則主義者だった。
だけど、元演劇人ということもあって、「世界は劇場、人生は夢」を座右の銘としていた。わたしの生活全てが演技だった。舞台役者の演技。ちゃんと「離見の見」たる演出家のもう一人のわたしが客席に座って見ている演技。
日常が本番だった。場当たりやゲネプロなんかなかった。いつもぶっつけ本番だった。家に帰ると、演出家のわたしからこっぴどくダメ出しを喰らう。
そりゃー神経すり減らすわ。
そんな頃のわたしが、夢に甦る。
肩肘張って正常を生きていたわたしが。
友人が二人出てきた。一人は、演劇で知り合った同い年の子だ。わたしみたいにどっぷりはまり込んでいるわけでなく、「折り込み手伝いまーす」ぐらいの子。他のみんなは「クールだよね」などと彼女を評していたが、わたしは全くそんなこと思っていなかった。むしろ情熱的な子だと思っていた。というのは、何年も不倫関係をずるずる引きずるような子だったから。彼女から何度も相談を受けた。「さっさと切っちゃいなよ」でわたしの意見は変わらなかった。だけど別れられない。だけどわたしに相談に来る。お互いに中島みゆきが好きで、カラオケで歌って彼女を泣かせて楽しんだりしていた。
もう一人は、社会人になってから友だちの友だちみたいな感じで出会った子。不器用な子で、いわゆるリアルドジっ子だな。だけど前向き。不器用さを必死に隠そうとしているところがわたしは好きだった。うん、彼女は好きだった。四つぐらい年下で、守ってあげたい、みたいな感情を持っていた気がする。レベッカのNOKKOに似ている、と勝手に思っていた。雰囲気が。「夢は牧場で働くこと。だけど臭いのは嫌だから絶対実現しない」などとけらけら笑って公言するような子だった。スナックバイト経験者同士で話が合ったくらいかな。
二人とも付き合っていた時期が違うから恐らくお互いに知らないはず。それ以前にいつもつるんでいるとかそういう仲じゃなかった。たくさんいる友人たちのたまたまその二人、程度。
だけど、彼女たち二人に共通するのは、まさに「世界は劇場、人生は夢」感だ。不倫の子とか、相談している内容はディープなのに、どこか他人事な感じだった。ドジっ子の方は……うまく言えないけど、そんな印象がある、くらい。彼女たちは二人とも「世界は劇場、人生は夢」を自覚して生きている。そんな印象を事後的に今勝手に持った。
あ、あとわたしがカラオケ好きだからだけど、二人ともその時に流行っている歌をあんまり歌わない方だな。わたしと同じ。当時なら浜崎あゆみとかじゃなくMi-Keとかを歌うような。
……そんな二人とわたしが、ある会社でOLをやっている。かしまし三人娘。
不倫の子がドジっ子をからかって笑っている。わたしはわたしでドジっ子に仕事を押しつけ失敗するのをうっすら期待しながら眺めている。上司と常にぶつかっていたわたしを不倫の子がなだめる。彼女がストレスを溜め込んだらわたしがみゆきを歌って泣かせてあげる。二人は実際には知り合いじゃないのに、ドジっ子は不倫の子の方になついている。
ありがちなパターンの気がする。と思って思い浮かんだのが『こうかふこうか』って四コママンガ。幸花がドジっ子で亀ちゃんが不倫の子で……いや違うな。わたしが慶喜+亀ちゃんで……いやー空気な感じは鶴ちゃんだなー。不倫の子は鶴ちゃん+亀ちゃん、か。最近亀ちゃんが主人公っぽくすらなっているのはそういうことかな。共感できる人が多いキャラ、みたいな。ドジっ子は幸花というより『天使のお仕事』の中井さんだな。
そんな三人が、なんか昔のマンガやアニメの話をしている。何故か『うる星やつら』占いなるものがあって、やってみると、わたしは竜之介だった。まあ剣道やってたし、ぐらい。不倫の子はしのぶで「当たってるー」とか。ドジっ子はランちゃんで「むしろあれくらい腹黒くならんと」みたいな話になる。
食事に行く。時代劇じみた古びた定食屋で、ばったり上司に会う。中村主水(要するに藤田まこと)だった。
何故か炊飯ジャーの話で盛り上がる。「ある時期から急にデザインがかわいくなったよな」みたいなことを藤田が言う。そーなんですかー、きゃはは、みたいな。
先に藤田が食事を終える。おごってくれるそうだ。っていうかこっちは最初からそれが狙いだった。「やりい」みたいな。
藤田がいなくなると急に社内の人間関係の話になる。設定は時代劇のままで、なんとか組という郎党が藤田のライバルをまとめ上げている、とか。「でもあの人ならうまくやりそう」「うん、ぬらりひょうすけ」とかわけのわからない会話。
話の流れでドジっ子いびりが始まる。ドジっ子がこう反論してくる。
「もっとこう、きれいな女性でいよう、みたいなのをですね」
不倫の子がふっと吐き捨てる。
「きれい、ねえ」
わたしが
「ケガレきったわたしたちに「きれい」なんて存在しない!」
と竜之介ばりの荒波バックで力説する。
「一度ゆってみたかった」
とドジっ子のケツを叩きながらわたし。不倫の子と大爆笑する。
セクハラオヤジとなんもかわんねえな、と思いさらにおかしくなる。
そんな感じ。
起きてすぐに泣いた。
これ見てたらドジっ子がNOKKO以外の何者でもないように思えてきた。つかそもそもあんま覚えてないんだよな。両方。
ナツメロに引きこもるか。
本気で便秘で困る。
なんかの禅問答を思い出した。
「動物に仏性はあるのかないのか」
「ある」
「では人間と動物の違いはなんなのか」
「動物は自らの仏性に気づくことができないが、人間は気づくことができる」
うろ覚え。
追記。
今読み返すとこれで死んじゃあ全然後ろ向きな自殺になるよなあ、と思った。過去(未来でもいいんだが)の自分を根拠にしているから。四コママンガでたとえているのもそうだね。木村敏論におけるシニフィアン的自己。即ちポスト・フェストゥム的。
というわけで死ねなくなった。
なるほどな。このために出てきたのか、とすら思った。
楽しい夢を見るようになった。それがやけに辛い。前向きな自殺へと背中を押されているようで。
わたしはばりばり正常人だった。快楽原則主義者であり現実原則主義者だった。
だけど、元演劇人ということもあって、「世界は劇場、人生は夢」を座右の銘としていた。わたしの生活全てが演技だった。舞台役者の演技。ちゃんと「離見の見」たる演出家のもう一人のわたしが客席に座って見ている演技。
日常が本番だった。場当たりやゲネプロなんかなかった。いつもぶっつけ本番だった。家に帰ると、演出家のわたしからこっぴどくダメ出しを喰らう。
そりゃー神経すり減らすわ。
そんな頃のわたしが、夢に甦る。
肩肘張って正常を生きていたわたしが。
友人が二人出てきた。一人は、演劇で知り合った同い年の子だ。わたしみたいにどっぷりはまり込んでいるわけでなく、「折り込み手伝いまーす」ぐらいの子。他のみんなは「クールだよね」などと彼女を評していたが、わたしは全くそんなこと思っていなかった。むしろ情熱的な子だと思っていた。というのは、何年も不倫関係をずるずる引きずるような子だったから。彼女から何度も相談を受けた。「さっさと切っちゃいなよ」でわたしの意見は変わらなかった。だけど別れられない。だけどわたしに相談に来る。お互いに中島みゆきが好きで、カラオケで歌って彼女を泣かせて楽しんだりしていた。
もう一人は、社会人になってから友だちの友だちみたいな感じで出会った子。不器用な子で、いわゆるリアルドジっ子だな。だけど前向き。不器用さを必死に隠そうとしているところがわたしは好きだった。うん、彼女は好きだった。四つぐらい年下で、守ってあげたい、みたいな感情を持っていた気がする。レベッカのNOKKOに似ている、と勝手に思っていた。雰囲気が。「夢は牧場で働くこと。だけど臭いのは嫌だから絶対実現しない」などとけらけら笑って公言するような子だった。スナックバイト経験者同士で話が合ったくらいかな。
二人とも付き合っていた時期が違うから恐らくお互いに知らないはず。それ以前にいつもつるんでいるとかそういう仲じゃなかった。たくさんいる友人たちのたまたまその二人、程度。
だけど、彼女たち二人に共通するのは、まさに「世界は劇場、人生は夢」感だ。不倫の子とか、相談している内容はディープなのに、どこか他人事な感じだった。ドジっ子の方は……うまく言えないけど、そんな印象がある、くらい。彼女たちは二人とも「世界は劇場、人生は夢」を自覚して生きている。そんな印象を事後的に今勝手に持った。
あ、あとわたしがカラオケ好きだからだけど、二人ともその時に流行っている歌をあんまり歌わない方だな。わたしと同じ。当時なら浜崎あゆみとかじゃなくMi-Keとかを歌うような。
……そんな二人とわたしが、ある会社でOLをやっている。かしまし三人娘。
不倫の子がドジっ子をからかって笑っている。わたしはわたしでドジっ子に仕事を押しつけ失敗するのをうっすら期待しながら眺めている。上司と常にぶつかっていたわたしを不倫の子がなだめる。彼女がストレスを溜め込んだらわたしがみゆきを歌って泣かせてあげる。二人は実際には知り合いじゃないのに、ドジっ子は不倫の子の方になついている。
ありがちなパターンの気がする。と思って思い浮かんだのが『こうかふこうか』って四コママンガ。幸花がドジっ子で亀ちゃんが不倫の子で……いや違うな。わたしが慶喜+亀ちゃんで……いやー空気な感じは鶴ちゃんだなー。不倫の子は鶴ちゃん+亀ちゃん、か。最近亀ちゃんが主人公っぽくすらなっているのはそういうことかな。共感できる人が多いキャラ、みたいな。ドジっ子は幸花というより『天使のお仕事』の中井さんだな。
そんな三人が、なんか昔のマンガやアニメの話をしている。何故か『うる星やつら』占いなるものがあって、やってみると、わたしは竜之介だった。まあ剣道やってたし、ぐらい。不倫の子はしのぶで「当たってるー」とか。ドジっ子はランちゃんで「むしろあれくらい腹黒くならんと」みたいな話になる。
食事に行く。時代劇じみた古びた定食屋で、ばったり上司に会う。中村主水(要するに藤田まこと)だった。
何故か炊飯ジャーの話で盛り上がる。「ある時期から急にデザインがかわいくなったよな」みたいなことを藤田が言う。そーなんですかー、きゃはは、みたいな。
先に藤田が食事を終える。おごってくれるそうだ。っていうかこっちは最初からそれが狙いだった。「やりい」みたいな。
藤田がいなくなると急に社内の人間関係の話になる。設定は時代劇のままで、なんとか組という郎党が藤田のライバルをまとめ上げている、とか。「でもあの人ならうまくやりそう」「うん、ぬらりひょうすけ」とかわけのわからない会話。
話の流れでドジっ子いびりが始まる。ドジっ子がこう反論してくる。
「もっとこう、きれいな女性でいよう、みたいなのをですね」
不倫の子がふっと吐き捨てる。
「きれい、ねえ」
わたしが
「ケガレきったわたしたちに「きれい」なんて存在しない!」
と竜之介ばりの荒波バックで力説する。
「一度ゆってみたかった」
とドジっ子のケツを叩きながらわたし。不倫の子と大爆笑する。
セクハラオヤジとなんもかわんねえな、と思いさらにおかしくなる。
そんな感じ。
起きてすぐに泣いた。
これ見てたらドジっ子がNOKKO以外の何者でもないように思えてきた。つかそもそもあんま覚えてないんだよな。両方。
ナツメロに引きこもるか。
本気で便秘で困る。
なんかの禅問答を思い出した。
「動物に仏性はあるのかないのか」
「ある」
「では人間と動物の違いはなんなのか」
「動物は自らの仏性に気づくことができないが、人間は気づくことができる」
うろ覚え。
追記。
今読み返すとこれで死んじゃあ全然後ろ向きな自殺になるよなあ、と思った。過去(未来でもいいんだが)の自分を根拠にしているから。四コママンガでたとえているのもそうだね。木村敏論におけるシニフィアン的自己。即ちポスト・フェストゥム的。
というわけで死ねなくなった。
なるほどな。このために出てきたのか、とすら思った。