火星人とは粘菌である。
2009/02/08/Sun
抑鬱状態が止まらない。便秘も治らない。
こういう時は食費が浮く。日にパン一個だけとかざら。市販の整腸剤は加減がわからないので牛乳を飲む。
睡眠不足か常時眠気のようなものを感じているのに、いざ寝るとなったらなかなか寝られない。寝ているのか寝ていないのか自分でわからないことが自覚できる程度には覚醒している。寝ることも立派な一つの行為だと思い知る。
食事する、排便する、寝る、こういった身体に関わる行為ですらやる気が起こらない。
だからといって落ち込んでいるような感情ではない。むしろ透き通っている。
エイリアンを閉じ込めたカプセルのガラスの中を這っている。そんな感じ。
ガラスの中を這っていたのに、いつの間にか通風孔のようなところを這っている。アクション映画でよくあるパターンだ。
明かりが見える。明かりの方から笑い声が聞こえる。
わたしは出口だと思う。
中を覗くと、笙野頼子が「“自称”火星人がなんか言ってるよ」と笑っている。周りのみたこ信者たちもくすくす笑っている。
出口なんかじゃなかった。
だけどそこから逃げられない。凧のように何本かの糸で引っ張られている。
糸の元を辿ると、みたこ信者に囲まれて、顔に布を乗せた誰かが布団に眠っている。死んでいるのかもしれない。糸はその死体から出ていた。
死体を囲んで、笙野頼子やみたこ信者たちはくすくす笑っている。
死んでいるのは多分火星人だ。みたこ教は、火星人たちに甘言を弄して近づき、彼らを虐殺するための組織だった。
だからいぶきは登場時点で死者でなくてはならなかった。
全て辻褄が合う。
スパイ映画の主人公になった気分だ。知ってはいけない事実を知ってしまった主人公。
ぞっとする。
だけど逃げられない。
このままだと信者たちも糸に気づき、わたしに気づくだろう。
仕方ないのでわたしは金属になりきる。火星人の特徴であり、使い方次第ではこのように戦闘能力ともなりえる。火星人はモノになりきることができる。使い方を誤れば、まさに地球人たちの手駒として利用される。モノになりきっているわけだから、一つも文句を言わない手駒。
笙野やみたこ信者たちが虐殺してきた、棄却し続けてきた、去勢を施し続けてきた内面たちは、こうやって周囲に紛れ込む。粘菌のように。
そしてある日、思い出したように活動を再開する。
それでいいのだ。
……最悪。
笙野はいつ気がつくのだろう。もしかしたらうすうす気づいているのかもしれない。であるならば、いつ現実を承認するのだろう。
自分が大事に抱えているその水晶こそが、おんたこウイルスの発生源である事実を。
器に無限領域は納まらない現実を。
作中では、いぶきはおんたこたちに殺されたことになっている。しかし、作者の笙野も共犯である。何故生前のいぶきを彼女は書かなかったのか。火星人が生きていては困るからだ。彼女の主観世界に生きている火星人が存在していないからだ。天国へ連れていけないからだ。
いぶきはおんたこに殺された。水晶を大事に抱え込む笙野に殺された。
笙野は作家らしくこっそりと自白している。
そう考えれば、全てすっきりと辻褄が合う。
笙野頼子という症例の精神分析的説明として。
こういう時は食費が浮く。日にパン一個だけとかざら。市販の整腸剤は加減がわからないので牛乳を飲む。
睡眠不足か常時眠気のようなものを感じているのに、いざ寝るとなったらなかなか寝られない。寝ているのか寝ていないのか自分でわからないことが自覚できる程度には覚醒している。寝ることも立派な一つの行為だと思い知る。
食事する、排便する、寝る、こういった身体に関わる行為ですらやる気が起こらない。
だからといって落ち込んでいるような感情ではない。むしろ透き通っている。
エイリアンを閉じ込めたカプセルのガラスの中を這っている。そんな感じ。
ガラスの中を這っていたのに、いつの間にか通風孔のようなところを這っている。アクション映画でよくあるパターンだ。
明かりが見える。明かりの方から笑い声が聞こえる。
わたしは出口だと思う。
中を覗くと、笙野頼子が「“自称”火星人がなんか言ってるよ」と笑っている。周りのみたこ信者たちもくすくす笑っている。
出口なんかじゃなかった。
だけどそこから逃げられない。凧のように何本かの糸で引っ張られている。
糸の元を辿ると、みたこ信者に囲まれて、顔に布を乗せた誰かが布団に眠っている。死んでいるのかもしれない。糸はその死体から出ていた。
死体を囲んで、笙野頼子やみたこ信者たちはくすくす笑っている。
死んでいるのは多分火星人だ。みたこ教は、火星人たちに甘言を弄して近づき、彼らを虐殺するための組織だった。
だからいぶきは登場時点で死者でなくてはならなかった。
全て辻褄が合う。
スパイ映画の主人公になった気分だ。知ってはいけない事実を知ってしまった主人公。
ぞっとする。
だけど逃げられない。
このままだと信者たちも糸に気づき、わたしに気づくだろう。
仕方ないのでわたしは金属になりきる。火星人の特徴であり、使い方次第ではこのように戦闘能力ともなりえる。火星人はモノになりきることができる。使い方を誤れば、まさに地球人たちの手駒として利用される。モノになりきっているわけだから、一つも文句を言わない手駒。
笙野やみたこ信者たちが虐殺してきた、棄却し続けてきた、去勢を施し続けてきた内面たちは、こうやって周囲に紛れ込む。粘菌のように。
そしてある日、思い出したように活動を再開する。
それでいいのだ。
……最悪。
笙野はいつ気がつくのだろう。もしかしたらうすうす気づいているのかもしれない。であるならば、いつ現実を承認するのだろう。
自分が大事に抱えているその水晶こそが、おんたこウイルスの発生源である事実を。
器に無限領域は納まらない現実を。
作中では、いぶきはおんたこたちに殺されたことになっている。しかし、作者の笙野も共犯である。何故生前のいぶきを彼女は書かなかったのか。火星人が生きていては困るからだ。彼女の主観世界に生きている火星人が存在していないからだ。天国へ連れていけないからだ。
いぶきはおんたこに殺された。水晶を大事に抱え込む笙野に殺された。
笙野は作家らしくこっそりと自白している。
そう考えれば、全てすっきりと辻褄が合う。
笙野頼子という症例の精神分析的説明として。