なんかもうね。
2009/05/31/Sun
部屋の壁一面が襖になっている。
その向こうからバスタブで水がはねるような音がする。映画にありがちなバスタブに頭を沈ませて溺死させる時のように激しい水音。
サイレースを飲むと大体こんな状態になる。ばしゃばしゃという水音が聞こえてよく眠れない。それがおもしろくて飲んでしまう。基本薬は溜めこんじゃう人だからまだ結構残ってるんだよなー。
だけど勘違いだったことがわかる。
やがてバスタブにつかって「はぁ」なんて息をついているかのような穏やかな水音に変わる。いや溺死してしまっただけかもしれない。
次に階段を上がってくる音がする。鉄製の階段を上る時のそれのようにやけに響く。この音もよく聞くな。サイレース飲んで寝ると。
さっきの水音を聞いて他の住人が上がってきたのかもしれない。
困った。
わたしは玄関のドアを少し開け、階段の方を見る。声をかけられる前に自分から出た方がいいと思う。
二人組の住人がフロアに上がってきたのを見計らってドアを開ける。
夫婦みたいだった。夫は目黒祐樹で、妻は見たことのある女優さんだったが名前は覚えていない。
夫が興奮気味にわたしに語る。
この階の方から、「殺してやる! 殺してやる!」と叫んでいる声が聞こえたそうだ。
わたしもなんでもない時に部屋でそうつぶやくことがあるので、「大したことないんじゃないですか」などとごまかすが、夫は何か事件が起きたと確信しているみたいだった。
仕方ないのでわたしが聞いた音のことを話す。
わたしと夫婦はわたしの隣室のドアを開け、中に入る。
広い部屋で、シングルベッドが三つ離れて置かれていた。真ん中の一つに裸の女がいた。もう一つのベッドに裸の男がいた。男は高校の同級生のY君だった。女の方も同級生だという記憶はあるが名前を覚えていない。ものすごく頭の悪い子だった。Y君はイケメンで背も高く女子に人気があったがわたしはどうでもよい人間に分類していた。成績自体は悪くなかったが、わたしにとっては彼も頭の悪い人だったから。
アレの最中だったか、失礼なことをした、とわたしは思う。しかし夫婦はY君につめよる。当然Y君は何もないと言い張る。目黒祐樹はようやく納得して、わたしたち三人は部屋を出る。
わたしは寝直そうと思ったが、隣室が気になって眠れなくなった。
部屋を出て、階段を下りる。わたしの部屋は四階だった。
一階にドアがある。開けるとそこはリビングのような部屋だった。さっきの夫婦とまた別の夫婦がいる。大型テレビで土曜の昼にやっているような馬鹿丸出しの馬鹿番組を見て笑っていた。
三人組のアイドルグループがあるマンションの前で歌っている。わたしたちのマンションだ。
別の夫婦の妻が「あの人たちにも困ったものねえ」と言う。なんのことだかわからなかった。目黒の妻が「あれよ、あれ」と画面の隅の方を指す。
画面の上の方にマンションのベランダが映っているのだが、そこで男女が素っ裸でセックスしているのだ。顔は画面から見切れていたが、明らかにY君とあの女だった。
わたしは急いで部屋を出て、階段を駆け上がる。四階に上がって、わたしは迷ってしまった。自分の部屋がわからない。ここか、と思ってドアを開けると、もう一つドアがあった。それをあけるとさらにもう一つドアがあったので、「開けるな」ということだな、と思った。
さっきの三人組のアイドルグループの一人が階段を上がってくるのを見た。ベランダでセックスしている男女にインタビューでもしようというのか。わたしは手摺に隠れた。
彼女が階段を上がりきるのと同時に飛び出し、彼女を突き落とした。
階段は螺旋階段になっていて、底は見えなかった。アイドルは深い深い闇の底に落ちていった。
部屋にはもう戻れない、と思って、螺旋階段を下りた。
いつまでも下り続けた。
……欲求不満とルサンチマンたっぷりの夢でなかなかおもしろかった。
現実の部屋が四階でもなく鉄の階段なんてついてないマンションだと理解するのに数分かかった。
馬鹿女を殺してやりたい。
現実の部屋が自分の部屋だと感じられない。
騙されてホテルか何かに監禁されているんじゃないか。
殺してやりたい。
ゴキブリ、トゥーザヘブン。
背後のわたしは拒否するか無視するかしかない。
肯定はない。
肯定とは全て幻想である。
映画『フォーカス』は逆精神分析映画としてなかなかだったな。
ユダヤ人どうこうとか社会問題で考えるとそうならないが。社会問題系映画と考えている人はどうでもいい。
わやわやするわ。
その向こうからバスタブで水がはねるような音がする。映画にありがちなバスタブに頭を沈ませて溺死させる時のように激しい水音。
サイレースを飲むと大体こんな状態になる。ばしゃばしゃという水音が聞こえてよく眠れない。それがおもしろくて飲んでしまう。基本薬は溜めこんじゃう人だからまだ結構残ってるんだよなー。
だけど勘違いだったことがわかる。
やがてバスタブにつかって「はぁ」なんて息をついているかのような穏やかな水音に変わる。いや溺死してしまっただけかもしれない。
次に階段を上がってくる音がする。鉄製の階段を上る時のそれのようにやけに響く。この音もよく聞くな。サイレース飲んで寝ると。
さっきの水音を聞いて他の住人が上がってきたのかもしれない。
困った。
わたしは玄関のドアを少し開け、階段の方を見る。声をかけられる前に自分から出た方がいいと思う。
二人組の住人がフロアに上がってきたのを見計らってドアを開ける。
夫婦みたいだった。夫は目黒祐樹で、妻は見たことのある女優さんだったが名前は覚えていない。
夫が興奮気味にわたしに語る。
この階の方から、「殺してやる! 殺してやる!」と叫んでいる声が聞こえたそうだ。
わたしもなんでもない時に部屋でそうつぶやくことがあるので、「大したことないんじゃないですか」などとごまかすが、夫は何か事件が起きたと確信しているみたいだった。
仕方ないのでわたしが聞いた音のことを話す。
わたしと夫婦はわたしの隣室のドアを開け、中に入る。
広い部屋で、シングルベッドが三つ離れて置かれていた。真ん中の一つに裸の女がいた。もう一つのベッドに裸の男がいた。男は高校の同級生のY君だった。女の方も同級生だという記憶はあるが名前を覚えていない。ものすごく頭の悪い子だった。Y君はイケメンで背も高く女子に人気があったがわたしはどうでもよい人間に分類していた。成績自体は悪くなかったが、わたしにとっては彼も頭の悪い人だったから。
アレの最中だったか、失礼なことをした、とわたしは思う。しかし夫婦はY君につめよる。当然Y君は何もないと言い張る。目黒祐樹はようやく納得して、わたしたち三人は部屋を出る。
わたしは寝直そうと思ったが、隣室が気になって眠れなくなった。
部屋を出て、階段を下りる。わたしの部屋は四階だった。
一階にドアがある。開けるとそこはリビングのような部屋だった。さっきの夫婦とまた別の夫婦がいる。大型テレビで土曜の昼にやっているような馬鹿丸出しの馬鹿番組を見て笑っていた。
三人組のアイドルグループがあるマンションの前で歌っている。わたしたちのマンションだ。
別の夫婦の妻が「あの人たちにも困ったものねえ」と言う。なんのことだかわからなかった。目黒の妻が「あれよ、あれ」と画面の隅の方を指す。
画面の上の方にマンションのベランダが映っているのだが、そこで男女が素っ裸でセックスしているのだ。顔は画面から見切れていたが、明らかにY君とあの女だった。
わたしは急いで部屋を出て、階段を駆け上がる。四階に上がって、わたしは迷ってしまった。自分の部屋がわからない。ここか、と思ってドアを開けると、もう一つドアがあった。それをあけるとさらにもう一つドアがあったので、「開けるな」ということだな、と思った。
さっきの三人組のアイドルグループの一人が階段を上がってくるのを見た。ベランダでセックスしている男女にインタビューでもしようというのか。わたしは手摺に隠れた。
彼女が階段を上がりきるのと同時に飛び出し、彼女を突き落とした。
階段は螺旋階段になっていて、底は見えなかった。アイドルは深い深い闇の底に落ちていった。
部屋にはもう戻れない、と思って、螺旋階段を下りた。
いつまでも下り続けた。
……欲求不満とルサンチマンたっぷりの夢でなかなかおもしろかった。
現実の部屋が四階でもなく鉄の階段なんてついてないマンションだと理解するのに数分かかった。
馬鹿女を殺してやりたい。
現実の部屋が自分の部屋だと感じられない。
騙されてホテルか何かに監禁されているんじゃないか。
殺してやりたい。
ゴキブリ、トゥーザヘブン。
背後のわたしは拒否するか無視するかしかない。
肯定はない。
肯定とは全て幻想である。
映画『フォーカス』は逆精神分析映画としてなかなかだったな。
ユダヤ人どうこうとか社会問題で考えるとそうならないが。社会問題系映画と考えている人はどうでもいい。
わやわやするわ。