「おあんどぅうゆ?」
2010/06/07/Mon
かしつやめいひきれれむぐぃうぇ。
母がきていた。
年々パワフルになっていっている。年々親とつきあう労力が増える。
なぜだろう、と考える。
どうパワフルになっているのか。
声が大きくなっている。子供の頃から声が大きい人だったが。
わたしにとってはただの騒音である。
たまらなくなって母に注意する。
母はこう反論する。
「耳が遠くなってるんだから仕方がないじゃない」
耳が遠くなっているから、他人には大きな声でしゃべってほしい、だからまず自分が率先して大きな声でしゃべっている、ということか。それともわたし以外の母の周囲の人が、母を気遣って大きな声でしゃべっているから、母もそれにつられているのか。
そういうことか、と思う。
疲れる。
そんなあるとき、ふと妙なことに気づく。
わたしは別に母を気遣って大きな声でしゃべるようなことはしない。いつもと変わらない声量だと思える。演劇をやっていたのだから、自分の声量くらい意識できる。
しかし、母は聞き間違いをすることがほとんどない。気遣ってないわたしと会話するときでも。
耳が遠くなっているのが事実だとしたら、いつも通りに(母と比べたら)小声なわたしの会話は、聞き取りづらくなっているはずである。
ところが意思の疎通にはほぼ問題がない。
いやそもそも、家族との会話なぞきちんと聞き取らなくてはならないほど複雑なことは話していない。
それはわかる。
アスペルガー症候群者の特徴として、聞き間違いが多いというのがある。
その聞き間違いの仕方も、「なんでそんな聞き間違いするの?」というようなことが多い。
これは、その前後の会話の文脈を読み取れていない証拠でもある。斎藤環の「自閉症とは文脈が読めない障害である」という主張にわたしは同意する。
一方母は、耳という器官に不具合が生じているにも関わらず、文脈を読むことで、会話の内容を理解している。
たとえば
「ごはんどうする?」
などというわたしの小声に対しても、わたしが「ごはん」について話していると理解できる。
それは、そういう時間帯であったことや、わたしが冷蔵庫を探っていたことや、聞き取りづらくなってはいるが「おあんどぅうゆ?」などのようにうっすら聞こえているだろう抑揚や、さまざまな要素を総合的に勘案した結果、導きだされた推論である。「この子は「ごはんどうする?」と聞いてきている」という推論。
こういうことだと思った。
とりあえず疲れた。
魂が吸い取られた。
母がきていた。
年々パワフルになっていっている。年々親とつきあう労力が増える。
なぜだろう、と考える。
どうパワフルになっているのか。
声が大きくなっている。子供の頃から声が大きい人だったが。
わたしにとってはただの騒音である。
たまらなくなって母に注意する。
母はこう反論する。
「耳が遠くなってるんだから仕方がないじゃない」
耳が遠くなっているから、他人には大きな声でしゃべってほしい、だからまず自分が率先して大きな声でしゃべっている、ということか。それともわたし以外の母の周囲の人が、母を気遣って大きな声でしゃべっているから、母もそれにつられているのか。
そういうことか、と思う。
疲れる。
そんなあるとき、ふと妙なことに気づく。
わたしは別に母を気遣って大きな声でしゃべるようなことはしない。いつもと変わらない声量だと思える。演劇をやっていたのだから、自分の声量くらい意識できる。
しかし、母は聞き間違いをすることがほとんどない。気遣ってないわたしと会話するときでも。
耳が遠くなっているのが事実だとしたら、いつも通りに(母と比べたら)小声なわたしの会話は、聞き取りづらくなっているはずである。
ところが意思の疎通にはほぼ問題がない。
いやそもそも、家族との会話なぞきちんと聞き取らなくてはならないほど複雑なことは話していない。
それはわかる。
アスペルガー症候群者の特徴として、聞き間違いが多いというのがある。
その聞き間違いの仕方も、「なんでそんな聞き間違いするの?」というようなことが多い。
これは、その前後の会話の文脈を読み取れていない証拠でもある。斎藤環の「自閉症とは文脈が読めない障害である」という主張にわたしは同意する。
一方母は、耳という器官に不具合が生じているにも関わらず、文脈を読むことで、会話の内容を理解している。
たとえば
「ごはんどうする?」
などというわたしの小声に対しても、わたしが「ごはん」について話していると理解できる。
それは、そういう時間帯であったことや、わたしが冷蔵庫を探っていたことや、聞き取りづらくなってはいるが「おあんどぅうゆ?」などのようにうっすら聞こえているだろう抑揚や、さまざまな要素を総合的に勘案した結果、導きだされた推論である。「この子は「ごはんどうする?」と聞いてきている」という推論。
こういうことだと思った。
とりあえず疲れた。
魂が吸い取られた。